恋愛の神様

  野山小鳥




※※※kotori noyama※※※



ワタクシを入れて、ドアがパタンと閉まります。

全身に吹き付ける風がなくなっただけで、人気のなかった部屋は冷たく凝っております。

結局、草賀さんに引き摺られるようにして、お家まで来てしまいましたが、今更躊躇してしまいます。

だって、草賀さんはあのキレイな女性とお付き合いなさっているんでしょう?
今更ワタクシなどがノコノコ上がってよいはずはありませんもの。

そりゃ、会った瞬間『天の助け!』と思って飛びついたのはワタクシですが…。

それについては、弁解させていただきましょう。



朝、ハクトさんの元から飛び出したワタクシは帰巣本能のままにお家に向かいましたとも。

ですが、公共手段を駆使して辿り着いた家には既にタツキさんが先回りしてウロツイテいたのです。

早っ!

というか、タツキさんが登場するという事は既にハクトさんが脱走しているということですね。

タツキさんまで介入しているとなれば既に会社にも手が回っていると考えた方がよさそうです。

そうしてこうして、ワタクシの最寄りの要所に追手が現れて、ワタクシは紛う事ない逃亡者の身となりました。

行くアテもなく一日走りづめ、思いついたのが鹿島支配人で。

ともかく逃げ込めばなんとかしてくれやしないかと、天にもすがる思いで教会を目指したのであります。

そしてさすがは神様。
彷徨う子ヒツジに救いの手を差し伸べて下さったようです。

ワタクシは状況も鑑みず、そこにいた草賀さんに縋りつきましたとも。

しかし、喉元過ぎればなんとやら……

危機を脱すれば、勢いも萎みます。

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