恋愛の神様

ああ、神様。
なんだって別れを決意した後にこんな試練を突き付けるのですか?


草賀さんが好きです。


今でもその想いに偽りはありません。

ですが、草賀さんが愛するのはあの女性。

草賀さんにとってワタクシは好きに手繰り寄せて抱き潰す事が出来る―――ハクトさんで言うところのピーさんみたいな存在だったに違いありません。

気楽だから人肌寂しい時に安易に手を出すのでしょう。

ですがそれは本当の愛ではありません。

一番でなくても良いから一緒にいたい。

ズルイワタクシは心のどこかで密やかに願います。

ですが本当にそれでよいのでしょうか。

ワタクシのエゴの為に草賀さんは真実の愛を掴み損ね、きっと永遠に幸せにはなれないのでしょう。

ワタクシは……ワタクシはヤッパリ草賀さんに幸せになってもらいたい。

たとえワタクシがアナタを失う事になるのだとしても。

そうして断腸の思いで別れを決断したのです。


それなのに――――。


愛する方の赤ちゃんですもの、ワタクシ一人でも生んで立派に育てます。

なんて、格好良いセリフです。

世の中でそれを有言実行された女性を全て尊敬致します。

そんな事、今のワタクシはとても言えません。

それ以前に、どうするべきか考えなきゃいけないのに、まるで考えられないのです。

このお腹の中に自分じゃない個体があるのだと思うと正直、怖くてなりません。

気分は宇宙人に支配された村人です。

育てるの云々の前に、産むのも堕すのも恐ろしいばかりです。

< 308 / 353 >

この作品をシェア

pagetop