シンデレラの落とし物
でも、これを逃したらもう二度と会えないかもしれない。
秋くんの時間ができるまで何時になってもいいから、待とう。
心を決めた美雪は返事を送った。


ーーー数時間後。


「再会に乾杯!」

「乾杯!!」

個室タイプの居酒屋。
久しぶりに会う秋は、イタリアで一緒に過ごしたときと変わらず、すらりとした長身に、淡い水色のシャツにネイビーのカーディガン。ベージュのチノパンから見える黄色のスニーカーがバッチリと決まっていた。
それに比べてわたしは……。美雪は自分を見てため息。どこにでもある普通のネイビーのワンピース。アクセントといえばウエストのリボンベルトくらい。少し高さのあるローファーだって特別可愛くもない。
もっとオシャレしてくればよかった。これじゃ秋くんのとなりに並んで歩いたらかすみそう。
偶然、同じネイビーカラーを着てきたのだけが救いかな。

再会を喜んでくれる笑顔に、美雪はなんとか笑顔を返した。

気楽に飲めそうな場所、ということで若者が多い街を避け、ビジネス街の居酒屋を選んだのだが、けっこう遅い時間だというのに酒を飲み交わすビジネスマンは意外なほど多く、酔った声があちこちから届くくらい賑わっていた。
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