シンデレラの落とし物
「でも、死んじゃうかと思った」

なにをいわれるのかと息を殺していた秋が、美雪の言葉に一瞬動きを止めて破顔する。

「愛しいと思う気持ちが強すぎて、止まらなかったのは認めましょう」

今度は美雪のほうが秋の言葉に、動きを止める番だった。

「本当に?」

「ん?」

「わたしのこと、愛しいって」

「おいおい! もしかして今さらオレの気持ちに気づいてないとかいう?」

茫然としている美雪の反応に、驚いた秋が飛び起きてベッドが揺れる。

「だって……」

上半身を起こし、気まずそうにいいよどむ美雪。うつむき加減の美雪の顎を持ち上げ、秋は目の高さを合わせる。

「好きじゃなきゃ会わない。こんなに待たない」

真っ直ぐな眼差しで気持ちを伝える。

「でも、わたし一度、結婚してるし……」

「それは過去の話だろ。オレは、美雪と、前に進みたい」

一度だけ、体の結び付きがあればその思い出だけで、生きていけると思ってた。
けれど、もうわたしはひとりじゃなくていいの?

「本当に、わたしでいいの?」

信じられない言葉の数々に、喜びで視界がぼやける。
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