君色-それぞれの翼-



「希咲ちゃん?」
職員室から出て来た若い先生に名前を呼ばれ、緊張していたあたしはとりあえず頷いた。

「国語担当の坂田です。よろしくね。」

そう言って先生はニッコリ笑った。

「えと…一橋希咲です。よろしくお願いします。」

あたしはちょっと下を向いたまま、先生を見上げて言った。

ちゃんと目を合わせて言えば良かった、と少し後悔したが、先生は笑顔を崩さずに、これから勉強する教室に案内してくれた。

「もう一人、羽坂志望の子がいるのよ。」

「えっ、何ていう子ですか?」
「戸谷皐っていう子。仲良くしてあげてね。」


可愛い名前だな。そう思った時、先生は一番奥の部屋の前で立ち止まり、ドアを開けた。




決して広いとはいえない部屋。

家具はホワイトボードと掃除用具箱と、二つの机のみ。


まぁ二人だからこんなものか、と思いつつもドキドキする。

自分にとっての新しい環境に。


「暫く待っててね。」


そう言って先生は出ていった。



綺麗で優しそうな先生だったな。

塾の怖そうなイメージが崩れ、少しホッとした。



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