不器用な彼と



さて。


目の前には佐藤勇気の部屋のドア。


うちと構造は一緒だけど、ついでに言うとうちでこの部屋にあたるのは私の部屋なんだけど、


どうしてもノックができん。


どうするよ。



…と、その時。


「…誰、あんた」


後ろから声をかけられた。


目深に被られたフード。


冷たい、声。


典型的引きこもりを絵にしたみたいな奴だな、というのが初見の感想←



「と、隣の、齋藤…」


「…あっそ」


そしてそのまま部屋に入ろうとするから、咄嗟に腕をつかむ。


佐藤勇気の腕が、びくっと震えた。


「離せっ…!」


「ご、ごめん。同じクラスだから、プリント…」


「…いらねーよ」


部屋に入っていってしまう。


…なんなの、あいつ。


仕方ない、プリントは佐藤勇気ママに渡すか…。
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