クールな彼の溺愛注意報




葵衣はあたしから視線をそらして、そっと名前を呼ぶと、

赤くなってすぐに家の中に入ってしまった。



ドアを開けたままにしてくれているところがやっぱり紳士だ。




「……っかわいすぎだよ」




たった3文字に緊張して、

たった2文字にきゅんとする。



あたしの名前を呼んだ彼の声が、頭の中でリピートされる。



不可抗力でゆるむ口元。


こんなに胸がときめくのは、相手がほかでもない葵衣だから。




――好き。




また声にせずにつぶやいて、あたしも軽く感じる足で家に入った。




外から向けられていた誰かの視線には、


少しも、気づかないまま。





 *

 :

 +

 :

 
< 231 / 371 >

この作品をシェア

pagetop