クールな彼の溺愛注意報




優しい低音ボイスにふりむくと、人のよさそうな微笑をうかべた男性が立っていた。


紳士みたいな雰囲気で、スーツがとても似合いそうなかっこいい男性。



家の前にとまっているノアの持ち主で、お母さんといっしょに出張に行く同僚さんだ。

つまり……二宮くんのお父さんってことになる。



お母さんの友人っていうのはてっきり女性だと思っていたから、今日はじめて会ったとき、とてもびっくりした。



それにそのときは二宮くんがいなかったから、

まさか彼が、うちの高校の有名人の親だとは夢にも思わなかったし……。


世間ってせまいな……。




「紫乃ちゃん。あんなやつだけど、葵衣をよろしくね」




目の前に来た二宮さんは、優しい笑顔であたしに手を差し出してきた。



表情も口調も言葉も優しい。

なのにあたしには、有無を言わせぬ契約交渉にしか思えなかった。




「は……はあ」




さっきまでの威勢はどこにいったのやら。


うなずくしかできずに、ほほ笑む二宮さんとしっかり契約成立の握手をかわしたのは、言うまでもない。





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