《大.落》♥ やらかしちまって!〜眠り姫★

「床屋以外で頭そるなんざあ、初めてだからよ〜」

「そうですか。わざわざ足を運んでいただきありがとうございます」

村山父の頭を剃りながら、秀馬は笑顔で答える。

「……アレの母親はな、心臓が弱くて入院ばかりしてるんだ」

「はあ」

「長女だからってな、妹たちの面倒を母親代わりにみてきたんだ。一子には苦労をかけてばかりいる」


「……はい、少し下を向いて下さい、はい、ありがとうございます」

秀馬に言われて下を向く村山父。


「だから、なるべく苦労かけさせたくない。そう思ってきた」

「はい、お気持ち……わかります」

「お前にわかる訳ね〜だろ。父親になったこともね〜のに」

「……はあ」

ーーーくそ、なんて答えればいいんだよ。

秀馬は、緊張して脇の下が汗ばむのを感じた。

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