続*時を止めるキスを —Love is...—


もっと飲むよー!と威勢良い彼女の無邪気さに、思わず笑ってしまったのは許して欲しい。


「滝野ってさぁ、同期の中でも“食えないヤツ”って評判なのよ。——よくぞ手懐けたっ!
お陰で私さぁ、この前ね、彼とずっと行きたかったレストランのディナーに行けたのよぉー。
やー、無茶も言ってみるものね。アイツ、その日のうちにスイートまでリザーブしてくれてさぁ。
ラッキーだよ、ほんと。もう、朝まで楽しんじゃったぁ。宝くじで一攫千金狙うよりはるかに儲かった感じよね。えへへー。
これも藍凪ちゃんのお陰だよぉ。てか、あたし何もしてないのにさぁ、うん。ありがと〜。
だから今日はお姉さんが奢っちゃうぞ!さぁて、遠慮無しに飲んで食べるわよー!」

一人称が普段の“わたし”から“あたし”になっているので、これは相当キテいるなと判断した。

手持ち無沙汰のように、空になったワイングラスのステム(脚)を小さく揺らしているが、その口は止まらない。

かといって、酔っ払った状態で言っても覚えていないだろう、と頷いておくに留める。


……本当は違うんですよ?——確かに、柚さんに怒られてねと言ったのは私なんだけど。


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