square moon
真実の手前
僕は車を止め
彼女に思いきって聞いてみた。

『あなたと父はどういう関係だったのですか?』

彼女はため息をついて
『関係…ねぇ…?』
と呟いた。

『友人、ではだめなのかな?』
僕の顔を見つめていった。

『だめってことはないですけど…』
僕は口ごもって答えた。

『お友達です。
あなたのお父さんと私は。』
真っ直ぐな目でいわれるとなにも言えなくなってしまう。

『形見分け…』
小さな声で呟いた。
『え?』
『僕に父はあなたへの形見分けを託しました。
他には誰にもなかったし…』
『あれは、多分、私がしつこくいってたからだと思いますよ。』

『俺、見たんですよ!』
僕は大きな声でいった。
その声に彼女はびっくりしたような顔をした。
『葬式の時、あなた父に…
父にキスしてましたよね!?』

その言葉に彼女は僕をにらむように見た。

『友達にキスするんですか?』
僕もにらむように彼女を見た。
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