君だけに、そっとI love you.
東先生が診察をする為に椅子を動かし掬恵との距離をぐんと近づける。
ずっと下を向いたままの掬恵。
東先生がボリュームのある掬恵の前髪を指で何度もかき分けておでこの状態を見ようとするが、掬恵が顔を上げないので上手くいかなくて少し困惑している。
掬恵に顔を上げてもらいたくて東先生が柔らかい口調で声をかける。
「吉井さん、恥ずかしいかな……?顔を少し上げて、僕の方に向けて欲しいんだけど──」
「いえ、別に──」
掬恵が少しだけ顔を上げる。
「よしっ、もう少し、顔を上げてくれる?」
「はい、もう少しだけなら……」
掬恵が顔を上げたのは本当に僅かな角度だけだった。
「うーん。もう少し……、顔を上げてくれないかな?」
「えっ、まだ……顔を上げるんですか!?」
「うん。お願い」