少しずつ、見えるミライ
彼は一旦、腕をほどくと、私の後ろ側から右側へと移動して来て、愛おしそうに肩を抱き寄せた。

そして、私の顔を覗き込みながら優しく語りかけた。



「俺は未帆さんに悲しい思いをさせたくないし、泣かせるようなことは絶対にしない。約束する。」

「.......。」

「だから、ずっとそばにいて。そばにいさせて。」

「.......。」



そう言うと、彼は私の髪を掻き上げ、そのまま手のひらで頭を支えるように抱え込んだ。

その仕草に心臓がトクンと鳴った瞬間、ゆっくりと彼の顔が近付いて来て、そっと唇が触れた。



胸は高鳴っているのに、その一瞬で、柔らかな安堵感に包まれる。

溢れるほど彼の誠実な思いが流れ込み、私の中をいっぱいにする。

心が満たされた私は、また泣いてしまいそうになる。



彼を信じてみたい。

彼と幸せになりたい。

今度こそ、信じていいんだよね.......?



やっと決まった気持ちを伝えたくて、黙っておでこをくっつけたままでいる彼に、泣くのを堪え、キスをした。

すると、彼は優しく微笑んで、私を力いっぱい抱きしめた。



「ありがとう、未帆さん。愛してるよ。」



そう囁かれたら、また涙が止まらなくなった。

でも、すごく、すごく、ものすご〜く幸せだった。



だから、彼がそばにいてくれたら、強くなれる気がした。

無意味に怖がるのは、もうやめようって思った。
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