少しずつ、見えるミライ
もちろん、面白くはないけど、こいつにバレると面倒だから、とりあえず、そういう時は我慢する。

彼が、こんなバカっぽいギャル崩れに興味を示すとは思わないし。



言うまでもなく、沙苗ちゃんは私の強力な味方だ。

誰にでも優しい彼も、心なしか、真面目に働かないこいつにだけは、微妙に冷たい気がする。

自分でもみんなに嫌われてるって気付いてるだろうに、三ヶ月経っても何の進歩も見せない強気な姿勢には、いい加減に恐れ入る。



「店長、来週の休み、変えてくれません? 私、朝陽君と同じ日に出勤したい。」

「無理言わないで。他のパートさんの兼ね合いもあるから、決まっちゃったシフトは、簡単には変えられないよ。」

「じゃあ、その次は合わせて下さい。つまんない仕事の唯一の楽しみだから。」



帽子に入れろって言ってるのに、小顔効果だとかで、顔周りに細く垂らした髪の束をクルクル指で巻きながら、少しも悪びれた様子も見せずに、彼女は言い放った。

まったくどうしたらここまで根性が座るのか、私にも教えてほしいくらいだ。



って、さっき、爪切っとけって言ったのに、まだ切ってないじゃん!!

こいつ、完全に私のこと、バカにしてる.......



「理恵ちゃん、さっきも言ったけど、爪、切ってくれない?」


「え〜、切りましたよぉ。店長、うるさいから。」
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