少しずつ、見えるミライ
とは言え、初日にあんなことを言われてしまった身としては、どうしても彼を意識せずにはいられない。

だんだん慣れて来たのもあり、由貴ちゃんや他のパートさんがいる時間帯は平気になったけど、二人きりの時は、やっぱりちょっと構えてしまう。



それを知ってか知らずか、私と二人だけの時、彼はその手の話をしない。

そもそも仕事中だから、そんなに無駄話もできないのだけど、ちょこっと時間が出来た時、彼が話すのはいつも彼自身のことやダンサーのお仕事の話、それからR'sや亜美ちゃんの話なんかで、私を困らせたりしないよう、さりげなく気を使ってくれているのが伝わる。



もちろん、その気使いは嬉しいし、そうしていろいろ話すうち、彼の温かい人柄も、益々わかって来た気がする。

最初の日に感じた通り、彼は裏表のないピュアで優しい子だ。

羨ましいくらいに素直で、心がきれい。

ヒネくれたアラサーのオバさんには、眩しく感じてしまうくらい。



なのに、彼は私の何がいいんだろう。

考えてみたところで、全然わからない。
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