最も危険な  ルームシェア
「何かあったら電話してもいいですか?」

そう言う声に不安が混じっていた。

彼女が単独でルートに出るのは初めてだ。

「僕は構わない。いつでも鳴らしていい。」

「ありがとうございます。」

「いつも通りで問題ないから自信を持て。いいな。」

僕は回りに聞こえないよう静かに言った。

「即答できそうにない件は折り返しでいい。」

「はい。」

「無理するな。急ぐ必要ない。ゆっくり行け。」

「はい。」

「緊急でも午後からまた出直せる。そう言って頭を下げろ。いいな。」

「はい。」

僕は彼女の目をしっかりと見据えて言った。

「大丈夫だから。」

彼女の目には不安と何かすがるような眼差しが混じっていた。

「はい。」

と言って彼女は唇をきつく結んだ。

< 19 / 94 >

この作品をシェア

pagetop