最も危険な  ルームシェア
「私にとって新しいスタートなんです。」

「うん。」

「ルームシェアならまったく面識のない人でないと気が休まらないです。」

「うん。」

「ですから滝野さんとは考えられないんです。」

「君の言いたいことはわかった。」

「よかった。じゃ、私は帰りますので。」

「仁科、僕の意見も一応言っておく。」

私は滝野さんに旧姓の仁科と普通に呼ばれたことが嬉しかった。

「まず、他人同士のルームシェアがどれほどのストレスになるか君は全くわかっていない。それから他を探すと言ったが今日中に見つけられるとは思えない。最後に僕は僕のルームシェアの相手として君なら歓迎する。」

「でも。」

「素性の知れない会ったばかりのヤツより安心感がある。」

「それはそうですけど。」

「君も逆の立場ならそう考えて当然だろ?」

「そうですけど。」

「それとも全く接点のない他人と今夜からルームシェアできるのか?」

「そう言われても。」

「仕事で疲れて帰ってもルームシェアという違うストレスからどうやって逃れられる?」

「でもそれがルームシェアなんでしょ?他人同士でルールを決めて上手くやっていくのが。」

「甘いな。現実はそんな簡単な言葉で済まされない。」

「とにかく私は他を探します。滝野さんには申し訳ありませんけど。」

「わかった。一応聞いてみただけだ。」

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