even if

pass through

それから、渋谷くんは本当に保健室に来なくなった。


だって、終わったから。
嘘ばっかりの、私たちの関係は。


私が保健室にいる限り、渋谷くんに会うことは数えるほどしかないだろう。
早く卒業してしまえばいい。
もう顔も見たくないんだから。


保健室の先生でよかった。
ここにいれば、安心だもの。
これ以上、傷付けられることもないし、これ以上、惨めな気持ちになることもない。


ただ、ひとつ残念なことは、ここは渋谷くんとの思い出が多すぎることだ。

…思い出、なんて言葉が相応しいかはわからないけど。

この白い部屋の隅々に、渋谷くんの残した欠片が残っていて、見ないようにしていても、私は気づいてしまう。

私がどれほど渋谷くんが好きだったかを。

渋谷くんはきっと、笑うだろう。

あれほどひどいことを言われたのに、まだ渋谷くんを嫌いになれない、愚かな私のことを。





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