even if

fall out

7月7日は渋谷くんの誕生日


私はそのことを、松原さんから聞いて知った。


『なにがいいかなぁ。プレゼント。碧の心を鷲掴みにするプレゼント』


松原さんはソファに座って、腕組みをしている。

『でもまぁ、受け取ってくれるか、微妙なんだけどね』

そう言ってカラッと笑う。


『そうだ。手編みのマフラーでも編んでやろうかな。これから夏本番だっていうこの時期にマフラー。最早これは嫌がらせよ』

鼻にしわをよせて、そう言う松原さんは少し怖い。


『どうしてマフラーなの?』

『だって、どうせ何あげたって、碧は私に冷たいんだもん。だから、マフラー。それで少しは暖かくなればいい。あの氷男』

『あぁ、なるほどね』

私は大きく頷く。
なんて自由な発想なんだろう。
私には考え付かない。

『けどさぁ…』

松原さんは急に暗い声を出した。


『なんで、私じゃ駄目なんだろう。中学から一緒にいるのに。まぁ、そんな子は他にもいるけどさ』

松原さんが、少し泣きそうな顔をした。

『碧、きっと好きな人がいるんだと思う。ずっと見てきたんだもん。分かるよ』


指の先が、スッと冷たくなる感じがした。

『羨ましいな、碧に愛されてる人が』


私は…
松原さんが羨ましいよ。

迷いなく、渋谷くんを好きだと言える松原さんが。
渋谷くんと同じ18歳の松原さんが。




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