even if

pink gold

カーテンを思いきり開けると、外の眩しさに一瞬顔をしかめた。

「北陸と東北が梅雨明け。全国で本格的な夏到来」

今朝、あんパンをかじりながら見た新聞の見出しを思い出す。

梅雨明け宣言なんて出さなくたって、ここ一週間はずっと晴れていたのに、どうしていちいち宣言なんか出さないといけないのかしら。

口に出さなくたって、これは明らかに梅雨明けなのに。
誰が見ても。


窓枠に手をかけてしばらくグラウンドを見ていた。

遠くで用務員さんが、ひまわりに水をあげている。


『ななちゃん先生?』

ノックの音に、慌てて振り返ると、綾部さんがドアから顔を覗かせていた。


『おっはよー』

弾むように入ってきた綾部さんを見ていると、こっちまで楽しくなってくる。

『おはよう。楽しそうね』

『うんっ。期末、やっと終わったんだもん!』

長かったー、と言いながら、腕を上にぐぃと伸ばす。

『もうすぐ夏休みだし!』

綾部さんは、楽しみでたまらない、という様子でそう言うと、

『なに見てたの?』

私の隣に並んで窓の外を眺めた。

『ひまわり見てたの』

『ひまわり?あぁ、あそこの?』

窓の外を指差す。

私はうん、と頷いて、

『夏だねぇ』

カーテンを閉めると、デスクに向かった。

『ななちゃん先生、夏休みのご予定は?』

手を後ろに組んで、綾部さんはイタズラっぽく笑う。

『ない!仕事だもん』

私がきっぱりそう言うと、おかしそうにけらけらと笑った。


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