しろっぷ
2、お願いがあります。
 司の指定したその場所は、司がバイトしているカフェとは違い、昔ながらあるような年季の入った喫茶店。
 『美里本舗』と書かれた看板が印象的だが、その看板以外は特段変わった様子はなかった。
 ゆかりはいつものクセで、外から司がいないか覗き込むように外から観察。
「誰だ」
 と、急に視界が真っ暗なり、後ろから手を使って目隠しされたことにすぐにわかった。

 この声、この匂いは・・・。

 その目隠しをした相手の手を掴み、しばらく考えたような声を出して、その幸せを噛み締めた。
「わかんないすか?司です」
「つか・・・沖田君」
「あ、僕の名字覚えていてくれたんすか?」
「胸プレートに書いてあったからね」
「でも司でいいっすよ。それより中にでも入りましょう」
「・・・ええ」
 落ち着いた印象を与えようと優雅な立ち振る舞いを見せるが、内心は失神寸前まで追い込まれていた。
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