鳥籠の底は朱い道
『赤はなんですか?』

そんな単純な質問に対して人はどう答えるだろうか?
大抵は馬鹿正直にパッと浮かんだ赤いモノをだろう。
例えば食べ物ならリンゴやトマト、ニンジンも人によっては赤い食べ物だろう。
他には郵便ポストや信号にも赤はあるし、よく怪我をするならば血もまた赤色。
――しかし、こんな簡単な質問に対して彼はこう答える。

「オレにとっての赤はモノではない。オレにとっての赤は『死』そのもの」

普通とは思えない回答だが彼は平然と言って見せる。
それは彼にとって赤を見る機会が人の数倍は多く、そして赤色という血を幾千も浴びる世界に身をおいているから。
その浴びてきた血は自分のものでもあるがほとんどは他生物の血。
そして血を浴びているのは常に彼。つまり相手に血が溢れるような行為をしているということ。
――だから、もう彼にとっては赤という単色は死でしかない。

そんな彼はどんな色にも混ざりそうもない漆黒の瞳を持ち、千の血を浴びようが一度も変色もせず、逆に光すらも飲み込んでいく漆黒の髪を持ち合わせている。
ただの見た目ならば、どこにでもいそうな少年として疑うことはないだろう。

――何故、彼がそんな血だらけの世界にいるのか?
誰もが思う疑問だろうが彼にとってそれは疑問にすらならない当たり前のこと。
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