鳥籠の底は朱い道
――だが、いつもと違ったのは黒馬の態度。
いつもなら朱道に素手で戦わせるか、もしくは勝手に黒馬が決めた武器で戦わせる。
だが今回は違う。朱道に武器を選ばせたのである。それも今まで使ったことのないような圧倒的な武器までもを。
「さぁ選べ朱道。いつもよりもリーチの長い剣か、それとも刀? もっとリーチが欲しいなら槍でもいいし薙刀でも構わない。それとも圧倒的な射撃で近寄らせたくないなら弓もあるし、もっと言うならば銃だってある。恐らくお前の思う武器は全部あるぞ? さぁ選べ朱道」
「……」
朱道は黒馬の問いに素直に答えない。答えられる訳がないだろう。今まで朱道を有利にするようなことはなかった。
それはつまりハンデをつけられているということだから。
「心配することはない。私は何を持たれようが構わないから好きな武器を取った方がいいと思う。負けた後の言い訳にされたら困るから」
「――だったらお前はどうなんだ? お前も武器を持つならオレも持ってやってもいい」
「そう? だったら残念、私は武器は持たない。君相手にこっちが武器が持つのはフェアじゃないから」
「ほう、そこまで言い切るか。だったらオレは尚更武器は持てないな。武器を持つとフェアじゃないだろ? オレが圧倒的に有利になるからな」
「いいでしょう。だったら武器はなしでいい。けど、武器がないなら私を殺すことは無理」
「関係ねぇよ。死ぬまで殴り続けてやるから安心しろ。だけどすぐには殺さない、オレにそんな舐めた口を聞いたんだからな」
朱道は噛み切れない笑みを出さないように堪えているが、その脳裏には椿の死姿を見出しているだろう。
だが、それ以上に椿は呆れた表情で見ていて、これ以上は何を言っても無駄だと戦いの構えを取った。
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