たった一人の甘々王子さま


あのときの優樹の可愛い笑顔を思い出す浩司。
その思いを絶ちきるように優樹がピシャリと。


「エロ大王、いつまで揉む?いい加減放せ。」


さっきから優樹の胸を触っている浩司を『キッ』と、睨む。
その睨みも可愛いと思うのは浩司くらいで........


「大好きな胸を揉んでいるだけです。お気になさらず。」


なんて、更に優樹の怒りを増長させる。


「もう!エロ大王!やめてってば!学校遅れちゃう!」


『学校』と言われては、浩司も諦めるしかない。
名残惜しそうに、優樹の胸から手を離そうとする。のだが......


「俺以外に触らせないでよ?」


まだ離さない......


「触らせるか!そもそも、こっちじゃ同い年なのに子供扱いされてるわ!........なんで日本人ってこうも幼く見られるんだろう..........。って、早く離してよ!」


朝食を食べ終えた優樹は浩司の手をペチペチ叩く。
ここまでされると、浩司も諦めるしかない。
『最後のひと揉み』と言って悪足掻きをしてから離す。


「ンアッ......ちょっと、浩司ッ!」


「優樹、可愛い声出さないの。はぁ、抱きたくなった........ダメ?」


「はぁ?これから学校だってば!」


『ダメに決まってるじゃん!』
と、叫びながら立ち上がり、リビングに置いてある鞄とスマホを手にする。
スマホのランプが点滅しているので開いてみると......


「あれ?エリーからだ。何だろう......」


メールが届いていたらしく画面をスライドさせている。優樹の表情がだんだん暗くなる。


「優樹?どうした、なにか忘れ物とか?」


浩司はコーヒーを飲みながら問いかける。
優樹が浩司の方を見ると


「今度のパーティーだっけ?エリーから招待されてるんだけど......おんなじやつ?エリーの父さんって、もしかして........取引先のお偉いさん?」


届いたメールの内容をさっきの話と同じものなのか浩司に確認する。


「あぁ、エド?カンパニーの取締役だよ。お友達のエリーには『フィアンセと行くから宜しくね!』って連絡しておけばいいよ。」


浩司は『そんなこと?』位の気持ちで答える。優樹は黙ったまま。


「優樹。エリーの父親、エド....エドワードはこっちの支社の大事な取引相手なんだ。これから始める事業についてとても賛同してくれてね。とても協力的なんだよ。出資者を募るためにも今回のパーティーを開いてくれるんだ。そのパーティーに一緒に行ってほしいんだよ。」


浩司の説明で少し納得した感じの優樹。


「......エリーのおとうさんが?そんなに凄い人なんだ........」


「優樹。お友だちもいるなら、今度のパーティー、参加してくれる?」


パーティーに参加してくれそうな雰囲気になり、浩司ももう一度お願いしてみる。


「ん。エリーの彼もいるみたいだし、話し相手がいるなら行く。......浩司はおっきな胸のおねーさんに会えるもんね。フン!」


『じゃあ、行ってきます。』


と、優樹はあっかんべーして家を出た。
ドアの閉まる音を聴きながら浩司は一人呟く。


「優樹のヤキモチ、相変わらずだねぇ......可愛いけど。」


優樹の用意したサラダもトーストも食べ終えて、残りのコーヒーも飲み干して二人分の食器を流しに持っていく。


「1年前は、優樹が食事の準備をするなんて思いもしなかったよ......本当に、女の子らしくなったよな。」


手慣れた手つきで食器を洗っていく浩司。
ふと、リビングの時計を見る。


「おっと、ゆっくりしてられないな。急がないと......」


風呂上がりのスエット姿からスーツへ着替える。


「さて、今日も頑張りますか。」


玄関に置いてある二人の写真を見つめて浩司も出掛けていった。

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