たった一人の甘々王子さま


浩司の肩を両手で押し退けようと力をいれる。


「浩司のバカ!退いてっ!」


動かない浩司に大声をだす。
そんな優樹が可愛くて押し退ける手を掴んで自身の首にかけ優樹を抱き締める。


「――――俺の名前、ちゃんと呼べるね。」


首筋に浩司の顔が埋まる。
優樹の耳元に浩司の声色が響く。
思いもよらぬ抱き締めに固まってしまう。


――――――ドキン!


『なに?この感じ――――』


されたことがない行動に何も出来ない。
どう対応すれば良いのかも分からない。


異性とこんなに密着したことなんてないから困る。
きっと、エミなら俊樹に抱き締められてもこんなにテンパることはないんだろう........。


「ちょ....ちょっ........こ.....浩司?」


抱きついたまま動こうとしないのでとりあえず声をかけてみる。
すると、ピクリと反応してきた。


「うん。嬉しいね。これからはそう呼んでよ?約束ね。」


『ギュッ!』と優樹の身体を抱き締めてから離れる。


「晩御飯の準備するよ。リビングでまってて。」


「――――う、うん。」


強引なのか、優しいのか――――――
まだまだ解らないことだらけの男。


「――――浩司――――」


優樹はソファーに座ってキッチンに立つ浩司を見ながら小さめの声で呼んでみた。
『名前を呼ぶ』
たったそれだけなのに、なんかおかしい。
浩司と出逢ってから自分の気持ちなのに解らないことばかりだ。


きっと、今の呼び掛けは本人には聞こえていないだろう。

浩司と一緒に暮らしていくとこの解らない気持ちがはっきりするのだろうか?


甘い言葉を紡ぎ、肌に触れてくる浩司との同棲が今、始まる。

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