たった一人の甘々王子さま


「え?これ?実は作ってもらったんだ。自分、料理は勉強中なもので........。そう言う支倉先生こそ、可愛らしいお弁当を作ってきてるじゃないですか。」


浩司作のお弁当を誉められ恥ずかしがる優樹は隣で微笑む支倉佳苗のお弁当を見つめた。


「私の可愛いですか?嬉しい、ありがとうございます。」


「二人ともいいなぁ。手作り弁当。」


同僚の中で唯一の男性、笹木慎太郎がコンビニのおにぎりを食べながら、呟いた。


「笹木先生、お弁当を作ってくれる彼女さんはいないんですか?」


支倉佳苗が聞いた。
さすが女子、気になる男は即、調査なのか?
恋愛偏差値ゼロに近い優樹は大人しくお弁当を食べる。


「彼女さん........か。いま、居ないんですよ。募集中~。そんな支倉センセは?」


「秘密です!」


「あ、俺だけプライバシー披露したのにズルいっすよ?」


やっぱり、サークル気分が抜けきれてない雰囲気だ。まぁ、初日だしこんなものか?
教育実習の間、うまく付き合っていければいいか........なんて、優樹は思いながら食事を続けていく。


そんな優樹に笹木慎太郎が質問をぶつける。


「で、田所センセは?お弁当を作ってもらったって母親ってことだ ろうし。実家暮らしなんでしょ?あ、普段は彼氏サンのところにお泊まりしてたり?」


ブッ――――


思わず噴き出す。
優樹の口から卵焼きが飛んだ。


「もう、田所センセ素直すぎ~!嘘つけないタイプっすね?」


ケタケタ笑う笹木慎太郎。
『はい、ウェットティッシュ。』と、差し出してくれる支倉佳苗も、


「で、田所センセイ、本当に彼氏サンの所にお泊まりしてるんですか?」


さらに突っ込んだ質問を。


「ゴホッ、え?何で自分なんですか?言わなくても良いでしょ?支倉先生も秘密なんだし。」


優樹も頑張って逃げるが、他人の恋バナは面白いんですよ?なんて、面白がられて詰め寄られる優樹。


「自分もノーコメントでお願いします!」


必死に抵抗しても、


「「却下で。」」


二人は速答。




「何を答えればいいんですか?」


開き直る優樹に、


「彼氏サンとの関係は何処まで?。」


支倉佳苗の質問はキャスター並みですね。


「秘密です!っていう先生に答える義理はありません。」


頑張って回避する優樹。
言葉のやりあいは普段から浩司で鍛えられている。
すぐに優樹を丸め込もうとするあの男は、いい練習相手だ。


まさか、こんなところで活躍するとは思いもよらず........

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