涙空*°。上
缶ビール
―凜said―

初めて聞いた、龍樹のお母さんの話。
離婚して、風俗に入って。
そして、亡くなったお母さんの話。

ひとつ思ったのは、
そんなお母さんでも、
龍樹は大好きだったんだなって思った。

龍樹が、初めて泣いた。
静かに、声を押し殺していたけど、
かすかに震えてた。
鼻水すすって、
『風邪ひいた』
って言ったときは、思わずちょっと笑っちゃった。


あたしみたいな、平穏な家庭には想像もできないような毎日だったんだろう。
龍樹はまだ中学生だったのに。


『お前が、母さんみたいなやつじゃなくて良かった。』
未遥の言う通りだね。




『お前がそういうやつじゃなくて、心底安心した。』
珍しい龍樹の弱々しい声。





『ごめんね、龍樹』
あたしは、精一杯の気持ちで謝った。

『ばぁか』
そう言って顔をあげた龍樹は、
すこし目尻が腫れていたけど、
いつもの龍樹で安心した。






ガチャっ
という玄関が開く音にびっくりしたあたしと龍樹。






『姉貴が帰ってきた』
でもそれ以上に、
『龍樹!?彼女か!?』
って言って入ってきた女の人が、
すごく美人で。
ものすごく夏樹にそっくりで。



あたしはびっくりした。
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