病愛。【完】
成美side




「いい加減にしろよ。成美…」




ここは保健室前廊下。




綾香が倒れたから、保健室に行くと言うので…





私が止めたのだ。





でも…颯は私の言うことなんて聞きもしなかった。





そして保健室前の廊下まで結局来てしまった。





「行かせろよ。それくらいさせてくれよ。」





「行かせない。言ったでしょ?颯がいると綾香は迷惑がかかるの。」





「…お前も一緒か?」





「え?」






いきなりの言葉。





「お前もあの狂ったいとこと…同じなのか…?」






同じ…




そうだよね。




だってあのいとこが邪魔な颯や真くんを消そうと思ってるように、私も邪魔な綾香を消そうとしてるんだから。






親友なのに。大事な幼なじみ、なのに。





すると肩が重くなった。




それはそうだ。





颯が…真剣に私の顔を見て肩に手を置いていたんだから。






「目を覚ませ。成美。」





「颯…?」





「もう…お前を責めたくない。俺にだって…お前は大事な幼なじみなんだから。」






大事な幼なじみ…





颯にとって私が?





「伊藤も一緒だと思う。お前は…伊藤にとっては大事な親友なんだから。」





綾香と私は…





なぜか私は涙がこぼれてきた。






なんでだろう。





これは遠まわしにフられたのと同じことなのに。





悲しい気持ちになるはずなのに。




なんでこんなに気持ちが軽いんだろう…





私、颯に「好き」って言ってもらいたかったんじゃないの?





綾香の名前なんて聞きたくなかったんじゃないの?





なんで…こんなに…






「綾香っ…綾香っ…!!」





綾香の名前しか出てこないの?





気持ちがあふれ出す。





綾香に言いたい。





謝りたい。





いつの間にか私の頭の中には綾香だけになっていた。





すると颯が私を抱きしめた。








「俺は…伊藤とバカみたいなこと話して笑ってるお前が好きだ。」









私は颯の顔を見上げて笑った。





やっぱり…私…





綾香に消えてもらいたくない…





ずっと側にいてほしい。
< 60 / 117 >

この作品をシェア

pagetop