家の前で倒れている男に餌付けしてみた結果(仮)
「あんたさぁ、杏子の彼氏の拓とってんじゃねぇよ」
「いっつも、人の彼氏盗るなんて何様なわけ?」
数人の女子に囲まれ、良くある体育館裏…ではなく、更衣室でリンチらしきものをされている最中。
肩を押され、背中にひんやりとした壁が当たる。
肩が地味に痛い。
文句を言われても、早く終わらないかな〜とボーとしていると、思い切り前髪を掴まれた。
「聞いてるの?お前」
グイッとリーダーらしき人が顔を近づけ聞いてくる。
女の子らしく、化粧を施しているけど香水の匂いがキツすぎて、顔が歪む。
聞いてるから、聞いてるから、顔近付けないでよ。
唾が時折飛んでくるときはたまに殺意が芽生える。
「…聞いて、る」
少しの対抗心で睨み付けながら言えば、案の定、床に叩きつけられた。
「〜った」
うわぁ、鼻折れてないでしょうね。
折れてたら慰謝料請求するから。
「気持ち悪いんだよ、何、睨み付けてんの?」
「も〜いいよ、凛ちゃん!や、やり過ぎだよ…」
おどおどした女の子があたしを叩きつけたリーダーらしき女を凛ちゃんと呼ぶ。
「…杏子はこの女に拓盗られていいわけ?」
「…そんなんじゃないけど」
この子が杏子…か。
ピンチな状況にいるあたしだけど、脳だけは冷静に動く。
…まぁ、別に人の彼氏なんて盗ったことなんてないんだけど。
それを言った所で信じてもらえないし、もうどうでもいいかなんて思ってる。