君と僕との勘違いの苦悩
君と僕との勘違いの苦悩 告白編
彼女は1人だった。
いつも1人でいた。
教室でいつも1人で本を読んでいる。
見た目はいたって普通だった。違う点といえば、髪がフワフワとしていていかにも天然そうで、淡いクリーム色というところだけだ。
1人でいるにも関わらず、いつも笑顔だった。
「なぁ、なんでいつも1人なんだ?寂しくとかねぇのかよ?」
「え、えーっと?誰でしたっけ?」
笑いながら首を傾げる彼女は特に詫びもなくそう答えた。
「俺か?俺は 狩野 祥哉(かりの しょうや)よろしくな!」
彼女には祥哉は光り輝いて見えた。
「お前さ、名前なんて言うんだ?」
「え、えっと 上山 美月(かみやま みづき)です」
「美月っていうのか!お前全然喋らないから知ら・・・」
そして視界が歪み世界が歪んだ。
気がつくと机に突っ伏していた。
どうやら数学の授業中に寝てしまっていたようだ。
横で美月も笑っていた。
小学生の頃とは打って変わり、よく喋るようになった。
いつも通りの平凡な日々
いつも通りの憧れる日々
そんな中で生きていくのが辛いとさえ思えるが美月の笑顔がその全てを吹き飛ばし、その全てを作り出した。
「狩野、授業中に寝るとは感心せんな。後で職員室にこい100回記念だ盛大に祝ってやろう」
先生は少し怒り気味に言ってきたが無視をした。
授業が終わると、
「祥ちゃん寝てるから先生に怒られるんだよ!」
休み時間になると席が隣なので美月とはよく話す。
「だってあいつの授業つまんねぇもん」
「つまんないからって寝ちゃだめだよ!通知表またC付いちゃうよ?」
真剣に言ってくれるのは嬉しいのだけれども、つまらないものはしょうがない。
祥哉は渋々返事を返した。
「わかったよ、寝ないようにするから。その代わり寝たら隣なんだから起こせよ?」
「うん!いいよ!」
美月は無邪気な笑顔で答えた。
それに対して祥哉は顔を少し赤める。
「祥ちゃんどうしたの?顔赤いよ?熱でもあるの?」
「べ、別に何でもない!」
「そう?熱とかない?」
不意に額に冷たい物が触れた。
「やっぱり少し熱っぽいけど?」
「べ、べ、別に大丈夫だから///心配しないで////」
「ふーん」
少し不満そうに美月は、わかったと言ってくれた。
「ほら、授業始まるから席つけ」
「はーい」
授業が始まった。
授業が始まって30分くらいやはり祥哉は寝ていた。
「祥ちゃん!起きて!」
小声で問いかけながら呟く美月しかし反応がない。
祥哉は起きないまま授業が終わった。
「う、うう、終わったか?」
「祥ちゃん!起こしたのになんで起きないの!」
「ああ、ごめん」
祥哉は少しフラついて椅子にもたれついた。
「祥ちゃん大丈夫?熱いよ!熱出てるよこれ!」
「大丈夫だから…」
元気がなさそうに返事した。
「祥ちゃん!保健室行くよ!」
祥哉の服の袖を引っ張るが美月の力ではやはり動かない。
祥哉は仕方なく保健室まで行った。
「先生!祥ちゃんが熱計りにきました!」
「はいはい、体温計そこに置いてあるはずだから適当に使ってちょうだい」
「適当だな先生のくせに」
「祥ちゃんそんなこと言わない!」
「ちょっと出かけてくるから熱あったらそこのベッドで寝てなよ」
先生は保健室から居なくなった。
机の上に置いてある体温計で熱を測ってみると、
「38.2⁉︎祥ちゃん!寝なさい!」
「いやでも、、」
「寝なさい!」
祥哉は、渋々ベッドに入って寝た。
美月も祥哉の横にある椅子に座って容体を見た。
5分くらいたった。
「美月?授業行かなくていいの?」
「・・・・・・・」
「美月?寝たのか…」
美月から返事がなかった。多分寝たのだろう。
「好きだってこいつは気付いてるのかな…」
そんな、思いが口から出てしまった。
「ひぇ⁉︎え、祥ちゃん⁉︎何言ってるの⁉︎」
美月はいきなり、声を上げた。
「美月⁉︎起きてたのかよ⁉︎なんで寝たふりなんかしてたんだよ!」
「驚かせようと思ったけど逆に驚かされちゃったね」
へへへ、と笑う美月2人とも耳まで真っ赤になっている。
「美月!」
「ひぇ⁉︎な、なに?」
「あ、あの、、」
伝えたい言葉がうまく伝わらない。
言いたい言葉がうまく言えない。
怖い恐い怖い恐い逃げ出したい思いでいっぱいになるが勇気を出して、
「俺は美月のことが好」
『好』まで言いかけたが目の前の光景に驚いて言い切れなかった。
美月が泣いた。
「ごめんやっぱ嫌だよなこんなこと…」
「祥ちゃん違うよ。やっと言ってくれたと思って、4年間待ち続けてた。初めて私に手を伸ばしてくれたのが祥ちゃんでその時好きになって4年間ずっと待ってたの」
「ごめん、気付けなくて……」
祥哉は精一杯の気持ちを込めて
「好きだよ」
ただ一言だけ言った。
「うん!」
泣いた顔で笑いを作る美月のその顔は泣いていながらだが、今までで一番いい笑顔に思えた。
そして、祥哉は美月が泣き止むまで一緒にいた。
そして、雨が止んだ。
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