白い海を辿って。

朝、目を覚ますと隣に彼女がいなかった。

はっとして飛び起きると、寝室の外から微かに音が聞こえた。



「おはよう。」


エプロン姿でキッチンに立っている彼女に声をかけると跳ねるように驚く。

驚かせて悪かったけど、そこにいてくれて安心した。



『おはよう、早いね。』

「そっちこそ。」

『朝ごはん作ろうと思って。』


彼女は今日仕事が休みだが、俺はいつも通り出勤だ。



『もう少し寝てていいよ。ご飯できたら起こすから。』

「眠れなかった?」


まだ眠気の残る俺と違って、彼女はすっかり目を覚ましている。

昨夜も彼女は睡眠前の薬を飲んでいた。



『そんなことないよ。少し早く起きただけ。』

「良かった…ひとりで帰ったかと思って焦った。」


安心から力が抜けて彼女に寄りかかると、腕を回して支えてくれる。

ぎゅっとではなく、そっと。

このまま眠ってしまいたかったけれど、火にかけていた鍋がふつふつと音を立てて、彼女が慌てて身体を離した。



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