白い海を辿って。

「朝ご飯食べるよね?」

『あぁ。』


相変わらず上の空の彼に、今は何も聞かないでおこうと思う。

疲れているときにあれこれ聞かれても、更に疲れてしまうだけだ。

ただでさえ神経を使う仕事なのだから。



『明日実。』


いつも通り完食してくれたことに安心していると、改まったように名前を呼ばれた。

ふと不安がよぎり、反射的に手にぐっと力を入れる。



『今日帰ったら話したいことがある。遅くならないように帰るから、待っててくれないか。』

「うん…。」


目を合わせようとしない彼の表情から明るい話ではないことが簡単に伝わってきた。

どうしてこういうときの不安は当たってしまうのだろう。



「行ってらっしゃい。気をつけて。」


先に出て行く彼に声をかけたけれど、心ここにあらずの様子で軽く頷くだけだった。

不安が、次から次へと押し寄せる。


ずっと順調に、平穏に幸せに過ごしてきたはずだ。

喧嘩もしていないし、トラブルだってない。


思い当たることは、何もないのに。



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