白い海を辿って。

あのときの、すべてを諦めどうでもよくなったような瞳が忘れられない。

あれだけ傷つけないようにと気をつけてきたのに。

自分がしたことの愚かさを、滝本さんの表情のない表情を、忘れたくて適当に遊ぶ俺は滝本さんに出会う以前の俺と同じだ。

ただの遊び人だったあのときの。



「本当にすみませんでした。」

『俺に謝ることではないけどさ…。』


早見さんが心配してくれていたのは、きっと俺のこんな部分だったんだろう。

最後はこうなると、早見さんには見えていたのだ。



『俺じゃなくて、理瀬くんとちゃんと話せ。』

「え?」

『ずっと滝本さんの傍にいながら、2人が付き合う気配は全くない。滝本さんが立ち直るまではって。』


喉に何かが詰まったように言葉を失った。

立ち直るまでは。

岸井のことから懸命に立ち直ろうとしていた滝本さんを、俺がまた…。



『まぁ何があったかは聞かないけど、ちゃんとしろよ。』

「すいません。」


恥ずかしさで顔を見ることができず、ただ俯いて謝ることしかできなかった。



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