白い海を辿って。

一喜一憂してるのは私だけじゃないのかもしれない…というのは自惚れすぎかな。


先生と行きたいところは沢山ある。

映画館にショッピング、カフェや美術館に植物公園。

いっそのこと全部言って先生に決めてもらおうかな、と思ったところでふとある想いが浮かんだ。



『滝本さん?』


突然黙り込んだ私に先生が不思議そうな声で聞く。



「先生、出かけるなら遠い方がいいですよね?」

『え?どうして?』

「だって…誰かに会うかもしれないですし。」


電話の向こうで先生が息を飲む気配がした。

2人で出かけて、もし先生の知り合いに出会ったとしたら…。


先生は結婚している。

たとえ私が恋人じゃなくても、一緒にいる相手が奥さんじゃないことを不自然に思われるだろう。

いくら離婚寸前でも実際はまだ離婚していないわけだし、浮気や不倫と捉えられる可能性もある。


そんな当然のことに、今初めて気がついた。



< 37 / 372 >

この作品をシェア

pagetop