白い海を辿って。

それと入れ違うように早見さんと青井くんが戻ってきた。

青井くんは少し疲れた表情を浮かべる早見さんにすみませんでしたと謝罪し、またすぐに出ていく。



「お疲れ様です。」

『あぁ、参ったよ。』


早見さんにコーヒーを差し出しながら言うと、ぐったりした返事が返ってきた。



『それよりお前、まだ滝本さんと連絡とってないのか?』

「え?」


また突然出てきた滝本さんの名前に驚く。

それよりって、そんなに大事なことなのだろうか。



「とってないですけど…」

『そうか。』


そう言ったきり、早見さんはしばらく考え込むように黙る。

なんなのだろう。

この前から青井くんといい早見さんといい、やけに滝本さんの名前を聞く。



『離婚して後ろ向きになってるのかもしれないけど、本当に大事に思ってるならちゃんと繋ぎとめておいた方がいいと思う。』

「繋ぎとめる?」

『あぁ。じゃないとかっさらわれるぞ。』


早見さんの言葉と休憩時間の終了を告げるチャイムが、俺の中に不穏に響く。


そのときぱっと頭に浮かんだのは、さっき出て行ったばかりの青井くんの顔だった。



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