イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「うちの家内が喜ぶよ。ありがとう」

 前田さんが手を差し出し握手をする。

 温かい手。

 もう明日から前田さんはいないんだ。

 気持ちの切り換えが出来ないよ。

 あんな奴の下で働きたくない。

 前田さんと最後の挨拶をして、後片付けを済ませると、ネット検索で瑠海・アングラードと入力した。

 まずは敵を知らなければ。

 だが、ヒットする件数の多いこと。

 調べた事を少し後悔した。

 私が知らなかっただけで、彼は超有名人だった。

 ハリウッドスター以上に。

 ゴシップ紙を常に騒がし、パパラッチに狙われる男。

 彼が有名人なのには理由がある。

 あのモデル顔負けのハンサムな顔。

 有能なビジネスマンとしての顔。

 そして、プリンスの称号のない王子という顔。
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