イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「え?」

 気づいた時には、車は数メートル先。

「桃華!」

 瑠海の叫び声が聞こえたが、私は動けなかった。

 ただ、目をつぶって恐怖から逃げるだけ。

 ぶつかる!

 死を覚悟したその刹那、ドンという大きな音がして車が止まった。

 でも……私は痛くない。

 どうして?

 目を開けるとそこにはとんでもない光景が……。

 私の三メートル程先で瑠海が倒れて頭から血を流している。

「瑠海!」 

 私は駆け寄って声をかけるが、彼の目は閉じたまま。

「うそ……。お願い、瑠海死なないで!瑠海!」

 瑠海の身体を揺さぶって呼び掛けても彼は目を開かない。
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