イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 そして……「さよなら」という別れの言葉。

 悲しそうな声だった。

 どんな思いであの言葉を口にしたのだろう。

 きっと彼女はもうルクエにはいない。

 今頃空港に向かっているか、それとももう飛行機に乗っているか……。

「セーラ」

 俺は椅子に座って眠っている妹に声をかけた。

 俺の声でパッと目覚めた彼女は満面の笑みを浮かべる。

「瑠海!良かった!目が覚めたのね。みんなに知らせないと」

 セーラが俺の手をぎゅっと握る。

「セーラ、桃華は?彼女は大丈夫なのか?」

「桃華は大丈夫。でも、凄く酷い顔をしていて……。三時間ほど前まではいたのよ。でも、私が様子を見に戻ったらいなくなってて、ひょっとしたら眠くなって城に戻ったのかも」

 人差し指を唇に当てながら、セーラが首を傾げる。

 多分、桃華は自分を責めているのだろう。
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