イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 目に映るもの全てが灰色。

 楽しさも、嬉しさも何もない。

 空虚な世界。

 瑠海に会うまではずっとこの世界で満足していたはずなのにな。

 私は瑠海と会って変わった。

 それから、ホテルに数日間こもってたけど、じっとしていられなくてここまで来てしまった。

 東尋坊を選んだのはここで水揚げされる越前がにを食べるため。

 いくら忘れようと思っても考えるのは瑠海の事ばかりで……。

 瑠海以外の男の人が今は全部ジャガイモに見える。

 最初の最悪な出会い。

 王子でセレブで嫌な奴って思ったけど、彼は茶目っ気もあって凄く頼りになる優しい人だった。

 頭に浮かぶのは瑠海の笑顔。

 口元をほころばせてとても楽しそうに笑う。

 それはとても魅力的で、私の心にも簡単に入り込んできて私の心を奪った。

 でも、結構キス魔。

 手紙も何も残さなかったけど、瑠海は勝手に帰った私の事怒ってるだろうな。
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