イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 きっと、その後輩くん、お兄ちゃんの無言の圧力に屈したんだよ。

 でも、ここは私が折れるしかなさそうだ。

「じゃあ、一回だけだよ。駄目だったらもう私の事に口出ししないでね」

 要は、私が駄目な女で結婚は無理だって、兄が納得すれば良いのだ。

「わかった。ところで、腹減ったな。寿司でいいか?」

「良いけど、この辺高級店ばっかだよ。築地まで行けば安くて美味しい店あるけど」

そう提案したが、兄に即座に却下された。

「築地まで待てるか。いいから来い」

 兄がそう言って入ったお店は銀座でも有名な寿司屋だった。

 値段がわからないとこが恐い。

 兄が頼んだ中トロが私の前に出される。

 このピンクと赤の絶妙な色合い。

 きっと、この中トロ1貫で回転寿司10皿以上食べられるんだろうな。

 そう考えると、勿体なくて食べられないというか喉を通らない。

 そんな私を見て兄が笑った。
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