変のみ成らぬ愛の糧。
幼い頃から僕は良くも悪くも不変だ。

大人らしいと育てられ、褒められ、
それでいて子供らしく可愛らしいと
蝶よ花よと可愛がられたのだ。
常識も道徳もよく理解し、規則を守り
失敗しては泣き、母に甘え。
大人と子供を両立したのだから、
僕はたいそういい子だったのだろう。

少し歳を重ねて年齢的にも大人になり
社会というものに揉まれ、
僕はどこか生き辛さを覚えた。
僕は良くも悪くも、不変だったのだ。

幼心の残る僕は愛された。
成人してもなお両親は僕を愛で、
不自由のない暮らしをし、
友人に恋人にと、幸せなのだ。
だとしたら感じる生き辛さの理由は
どこから来ているのかと悩む。

そう僕は幼かった。
失敗しては泣き、人に甘え、
子供らしく自分の欲に忠実だ。
玩具を取られた子供のように嫉妬し、
母親の側から離れない子供のように
誰かに執着し、束縛する。
自分の愛したものは自分のもので、
それ以外の何ものでもないのだ。
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