Trick or Treat?


「す、すいませんッス」


「4限目終わったらさっさと来いって言ったのに、何。俺を怒らせたいの?」


「そういうわけではなく、由良くんが、」


「俺が、何」


「何にもないです」


「ッチ」


王子スマイルのまま、舌打ちされるような恐怖を味わう人がこの世に私くらいしかいないだろう。


私以外には聞こえないように、声を潜めているあたりがますます腹黒由良くん全開です。


引っ張っていたネクタイをするり、と離して、


「誰か他の男と話して、遅れたとかほざいたら……どうなるか、分かってるよね」


「は、はなっ、話してませんですよ、ま、まったく」


「ふうん」


疑いの瞳が怖いです、由良くん。



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