†ヴァンパイアの恋情†

 …まだ終わったばかりかしら。
 入りづらいわ。

「さっきの雪女さー、ほんっと空気読まないよね」

 ドアにかけかけた手を止めた。
 …私の話?

「あー思ったー。何ヒス起こしてんのって感じでー」

「それでも表情変わらないんだから、気持ち悪いんだよねー」

 ————変わらない。
 去年と何も変わらない。

「お前らそれしか話すこと何のかよ」

「でも、あいついないと空気軽いのは事実じゃん」

 笑い声が響いている。
 教室だけでなく、私のところまで。

 男も女も、人間なんて、くだらない。

 無意識に拳を握っていた。強く。

 感じるものはあるのよ。
 人でも、動物でも、…私でも、

 ————ヴァンパイアでも

 俯きかけたその時、バンッ、と机を叩く乾いた音が響いた。

「いい加減にしろ」

 ————皇?
 少し、顔を上げる。
 手を緩めた。

「どうした?皇」

「春島はお前らに何もしてないだろ」

「は?お前だってさっきの雪女にムカついただろ?」

 さっき…、冷たく当たった時。
 また俯き加減になる。

「いや?別に。悪いのは俺だからな」

 皇…。

 私…は…。

 ドアに手をかけかける。
 あと少しで触れるところで止まるのは、怖いから、なのかしら。

 こんなの時でも、表情は動いてくれないのね。


 ガラッ

 ドアが、開いた。









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