【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!

和やかに母と小百合さん達が会話を弾ませている中、私と幹太さんは無言で見つめ合い、少しだけ苦笑してしまう。

「やっぱその服か」

「へへ」


「着物に押しつぶされるよりは、いい」

そう短く言うと、そのまま席に座った。私の返事なんて待たずに。
美鈴は、母の後ろで黙って幹太さんへ視線を向けている。


「全くうちの倅は、本当に奥手で。この年まで浮いた話もなく。親としては心配でして」

「私の娘は、ほいほい男に着いて行く事なく、しっかりと教育し過ぎたせいか控え目すぎて……」

お互い、本人が居る前でよくもまあ言える。

気にしないように運ばれてきた前菜の方に目をやる。
まぐろのカルパッチョと
トマトの上にモッツアレラチーズ、バジルが乗っているカップレーゼ。

着物の母たちが食べているのが似合わなくて笑いそうになるのを耐えていると、幹太さんもわざとらしい咳払いをしていたので余計に我慢できなかった。


「すいません、ちょっと」

そう言って席を立ち、お手洗いに向かう。



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