【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!


「貴方のお父さんが、生前に言ってました。『娘は、鳥籠の中で生きるの可哀想だ』と。麗子さんも苦渋の決断だったのは承知ですし、彼女の生き方は尊敬しても否定はしません」

父の話に、顔を上げる。
デイビットさんが私を一向に下ろそうとせず、レジのウエイトレスさんやお手洗いに向かうお客さんの視線を浴びて恥ずかしくなる。

「『声を殺して泣いていては、あの子を誰も見つけてくれないのではないだろうか』と」

旧美術館だけあって、混雑した時の待合室も、的の風景を展望できる素敵な場所だった。

私の落ち着きのなさに気づいてくれたのか、そちらへと向かう。


「だから、賭けをしました。『私が声を殺して泣く少女を見つけたら、私と結婚させて下さい』と。一人で泣く貴方に私はずっとずっと会いたくて、早く抱き締めたくて。本当に会えた時、一目で恋に落ちました。笑いますか? 28歳にして、私は初恋のように胸が躍っているのです」

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