【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!


朝帰りした家では、お手伝いさんもお弟子さんたちもぴりぴりした空気の中、口を閉ざしていた。きっと母が不機嫌なのだろう。
今まではその空気が伝わって私も怖かったけど、今はもう平気。
逆に、私に怒っているのを他の人たちにも伝染させて張りつめた空気にするのはどうかと思う。

と思いつつ、朝は稽古で母は居ないし、私が仕事から帰ってきたらご飯を済ましているか仕事で出かけているから、此処の所呼び出される以外は会っていない。
もちろん、美鈴とも。

「あの、麗子さんに謝られた方が」

シャワーだけ浴びて、出勤しようと靴を履いていたら、一番若いお弟子さんがすすすーっと私の隣にやって来て耳打ちした。
だから私は、首を傾げる。

「何を?」


この年で外泊くらいで何故親に謝罪?
外泊する連絡はした。
跡取りではない私を用無しだと放り投げたのは向こう。
放り出した後も、私の監視や働く場所、出かけるのに誰かの車を出させる。

そんな鳥籠の生活はもううんざりだ。

「いってきます」

昨日の夜、初めて知らない世界に飛び立った。
舞い降りた先は、春の夢の中だったけれど。

文句を言われたくないのなら、――貯金してここから出て一人で頑張るしかない。
自由を手に入れるのは、私次第。Up to me.

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