【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!

しみじみと言うと、調理場の奥に戻り作りたてのどら焼きを持ってきてくれた。
新作の栗餡で作ったどら焼きらしく、食べてみて欲しいと言われて一口食べる。

ほんのりとした甘さと栗の風味がしっかり残っていて美味しい。
どら焼きには、春月堂の家紋、桔梗の花が焼き印されていて見た目も美しい。


「美味しいです」

「うんうん。美麗ちゃんも可愛いよねぇ」

さっきから独り言のようにおじさんが言うので、少し首を傾げてみた。

「いやあね。こんなに可愛い子が二人も居るのに、――あのバカ息子は」

それだけを言うと、小さく『はやく孫が見たい』とだけ言ってまあた調理場に戻っていった。
私にはクエスチョンだらけの独り言だけど、深く追求出来ず静かにどら焼きを食べて、小百合さんが買い物から帰って来るのを静かに待つことにした。

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