難攻不落な彼女
「咲良の兄の彰です。

 妹がお世話になったみたいで、ありがとう。」


「いえ、俺は何もしてませんから。」


「いや、そんなことはないよ。高校生とはいえ、可愛い妹を家で一人で食事させるのはしのびないからね。

 糸井君が誘ってくれてよかった。

 もう、遅いから、早く帰らないと、家の人が心配してしまうね。長々と引き止めてしまったみたいで、申し訳ない。」


「いえ、うちは男ばっかりで、誰もそんなことで、心配なんかしませんから。大丈夫です。

 じゃあ、俺、帰ります。」


「うん。バイバイ」


咲良が、涼介を見送ろうとすると、彰が言った。


「咲良、司のフォローをしてあげなよ。」


いつの間にか、司は家に入っていた。


「でも・・・」


「俺のことはいいよ。どうせ送って来たなら、家に入る鈴木さんを見て帰りたいし。」


彰の視線にとっさに名字で呼ぶ涼介。


「わかった。ありがとう。おやすみなさい。」


「おやすみ」



咲良は、手を降りながら、家に入って行った。


なぜか一緒に入らなかった彰に涼介が目をやると、


「司が失礼な事を言ったみたいだね。

 咲良の事を心配してのことだから、許してやって。」


「あ、はい。司君が鈴木さんのこと溺愛してるのは、兄から聞いて知っているので、気にしません。」


「咲良のことを溺愛してるのは司だけじゃないよ。」



微笑む彰。




「もし、うちの妹を泣かしたりしたら・・・」


空気が変わる



「殺すよ」



涼介の周りの温度が5度は下がったように感じた。



「じゃあね。」


その言葉に、無言で頭を下げ、自転車に乗る涼介。


帰りながら、恵介の言葉を思い出していた。



「司の威圧感も半端ないけど、上の二人のにーちゃんは化け物並みだ。」



涼介は、その言葉を、体を持って実感した。
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