難攻不落な彼女
教室に戻ると、涼介の席に由衣が座っていた。隣の咲良と話している。


「あ、戻って来たよ」


涼介達に気づいた咲良が由衣に言う。


「どうかしたの?」


涼介の問いに咲良が尋ねた。


「日本史の課題、来週の月曜日が期限でしょ?

 まだ出来てないから、今週は、放課後残ってやって行こうかと思うんだけど、どう?」


「わかった。いいよ。」



「俺もいいよ。」


涼介と蓮は答えた。


「じゃあ、私、そろそろ席に戻るわ」


由衣が自分の席に戻って行く。

蓮も自分の席に着いた。



「本当に大丈夫?」

咲良はきっと夕飯作りの心配をしているんだろう。そう思った涼介は、笑顔で答えた。

「大丈夫、一週間くらいなら、毎日カップ麺でも平気だし。」



「いや、一週間、毎日カップ麺は駄目でしょ。」



戯けて言う涼介に咲良は言った。

その声に少しだけ心配そうなに気づいて、涼介が続ける。



「前にさぁ、一番上の兄貴が、好きな人に振られたことがあったんだよね。よっぽどショックだったのか、3日くらい家事を放棄しちゃってさぁ。

当時、中学生だった、けい兄が飯の準備してくれたんだけど、毎日、テーブルにインスタントを並べられて、どれが良いって聞かれたな。」


それを聞いて咲良が笑った。


「恵介君らしいね。」


「俺も陽介も小学生だったから、大量のインスタント見て大喜びしたよ。

流石に、3日目にはちょっと飽きかけたけど、次の日から兄貴が復活したから、なんの問題もなかったし。

それにうちは、料理上手い人がいないから、一週間は続かなかったけど。3日くらいなら余裕だよ。」


「うちは、カップ麺が夕食ってトラウマなんだよねー」

「そうなの?咲良ちゃん家は料理上手い人多いみたいだけど、トラウマまで行く?」


「それがね・・・」


その時、チャイムがなって、次の教科の教師が入って来た。


「また、後でね。」


少し顔を近づけて、小さな声言う咲良に涼介は平静を装って頷いた。


(ヤバい。今のはヤバかった。)


咲良にとっては何気ない行動だったのに、涼介の鼓動はあり得ないほど速くなった。
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