ロングバケーション
…帰って来てしまった。

見慣れてしまったこの景色。

もう二度と、お目にかかることはないと思ってたのに。

「おい」

「…ビクッ!」

「驚きを口で言うな、バカか、お前は」

…だって。

空港ロビーにあんたがいると、思ってなかったのに。

バカなこと言ってないと、泣きそうなんだもん。

そんな事を考えながら、振り返ると、仁王立ちしてこちらを睨む、慎一の姿が目に飛び込んできた。

「…なんで、ここに、慎一がいるのかな?」

「…なんで、勝手に帰った?」

「…」

「俺がどれだけ惨めな思いしたか、わかってるのか?」

「…」

「次に同じことしてみろ。
お前の会社に乗り込むからな」

…な、なんてこと言うの、この男。

私は思わず、眉間にシワを寄せる。
…が。

そんな事お構いなしに、慎一は、私の手首をギュッと掴んで、ホテルに連行した。
< 52 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop